モビリティセンシングデータプラットフォームの構築とConnected Carサービス特化型AI SaaSの開発事業
モビリティセンシングデータプラットフォームを活用する世界
株式会社スマートドライブ
取材: February 2022
近年、「CASE」(注1)への注目がモビリティ業界のみならず社会全体で増しています。 このトレンドの中で、ドライブレコーダー等のコネクテッド機器が登場。各機器から収集されるデータについても多様性を増しており、これらのデータを連携させ新しい価値を創出させるべく開発が行われています。 しかし、機器やデータを連携・活用するためのプラットフォームは各メーカーやベンダー独自の仕様や自社サービスに限ったクローズドな仕組みを前提としたものが大半です。共通プラットフォームがないことが、経済的にも時間的にも投資コストを膨張させ、サービスの高度化や新規事業者の参入を阻んでいます。 スマートドライブでは、Connected Carサービスやモビリティデータを活用したビジネスの創出を考える事業者が容易で短期的にサービスを立ち上げることができる「モビリティデータプラットフォーム」や各機器間でのデータ連携を可能とする「汎用API」の開発を実施しています。また、利用者が早期に事業化レベルに到達できるようConnected Carサービスに特化したAI SaaSの開発にも取り組まれています。
対談参加メンバー (左から、NEDO 河﨑、同 岩崎、スマートドライブ 元垣内さん、NEDO 工藤)
スマートドライブ 取締役 元垣内 広毅さん
(NEDO 岩崎) そうした課題をお持ちの中で取り組まれた今回のNEDO事業ですが、データ連携の枠組みを構築するにあたって、どのような苦労があったのでしょう?また、その克服に向け、どういったチャレンジを行ったのでしょうか? (スマートドライブ 元垣内さん) まず、自社デバイスの販売にフォーカスすることをやめ、各社のデバイスとうまく連携することを重視(水平展開を指向)するという方針の転換を行いました。また、ワンソースで集めたデータを、保険など他のビジネス領域にも展開していく工夫も行い、データ連携パートナーになる企業とエンドユーザー双方へメリットを提示するモデルを構築していきました。
(NEDO 岩崎) 事業期間中に当初の計画では想定していなかった連携先の拡大も達成できたと思いますが、連携拡大に向けて取り組まれた具体的な取組み内容をご紹介いただけないでしょうか? (スマートドライブ 元垣内さん) 具体的には、技術面・広報面でいくつかの取組を行いましたのでご紹介させていただきます。 技術面では、当初は、ドラレコ等の車載機器類を製造販売する事業者様と連携し、当該車載機器等から集積可能なデータの形式・種別の調査を行いながら、個社毎の連携から脱却すべく、汎用的なデータ入力のフォーマット等の仕様策定を進めました。そして、その仕様に基づいたデータをアップロードにより、異なる様々なメーカーの車載器等からのデータであっても、横断的にデータ解析及びデータ活用まで、一気通貫でモビリティセンシングデータプラットフォームとして利用可能な仕組みを構築していきました。これにより、国内外の複数のGPSトラッカー、ドライブレコーダー等の車載器等のコネクテッドデータとの連携を一歩一歩実現していきました。 併せて広報面では、実際に連携の実績が進む都度、積極的にプレスリリースを発信したり、弊社での大規模なオンラインカンファレンス等でも発表していきました。昨年度のカンファレンスでは、前小泉環境大臣をご講演にお招きし、大規模に開催しました。このように、新たな連携候補先の開拓に向けた取組みを継続的に行なっていきました。 さらに、横断で連携した車載器のデータからプラットフォームを通じて解析した結果をAPI経由で取得する仕様を、SmartDrive APIとして公開し、コネクテッド機器を活用したモビリティデータの活用のハードルを下げる仕組みを構築しました。より実際のサービスにて利活用を進みやすくする取組みも進めました。 また、事業期間の後半では、コロナ禍であり、世の中一般に新たな投資を控える動きが強まっていた中で、ユーザーサイドが利用を開始するにあたって、新たな専用端末に依存せず、既に広く世の中に浸透してる機器との連携を拡大することに、大きく舵を切りました。その結果、ETC2.0をはじめとする既存のデバイスとの連携や活用を前提とした仕組みへの拡張にも取組んで行きました。事業期間全体を通じて、当初の計画では想定していなかった、様々なチャンスやハードルがありましたが、それらに都度向き合ってひとつひとつ取り組みを重ねて行くことで色んな可能性が見えました。
モビリティセンシングデータプラットフォームにてマルチデバイスでの連携を実現した主なデバイスの例
(聞き手) ――実際に事業に取り組まれたスマートドライブ様のお立場からは、どういった意義が今回のNEDO事業の支援から見えてくるとお考えでしょうか? (スマートドライブ 元垣内さん) 今回、NEDO事業を通じて構築したモビリティセンシングデータプラットフォームは、既に複数の車載機器の連携実績がございます。汎用的に連携が可能な共通仕様を有するデータプラットフォームの開発により、個別の専用仕様に縛られることなく、大きなリソースをかけていた個別開発から脱却できるようになりました。車載機器との新規の連携のご提案があっても、非常にスピーディに実現ができるようになりました。その結果、弊社と連携先の双方にとって、連携コストの大幅な低減につながり、コネクテッド化で生まれるサービス化の早期実現や価値の創出といった、NEDO事業の本来志向する世界観がまさに現実にできつつあります。 また、NEDO事業でデータ連携や利活用についてのビジョンや取組の方向性が示されていることの意義も大きいと感じています。例えば、連携候補先企業様とデータ連携の設計について議論を行う機会においても、幅広いデータ連携により価値を創出するというNEDOの事業のビジョンを掲げることで、オープンイノベーションによる事業共創の議論が展開しやすくなったという効果もございました。 加えて、NEDO事業による共通的なモビリティプラットフォームを通じて、非常にスピーディに様々な車載機器の連携を実現したことで、ある意味では、モビリティプラットフォームを利用する既存サービスでもある、弊社の車両管理サービス(法人向けSaaS事業)自体も、結果的に、非常にスピーディにデバイスラインナップを増やすことができました。それによって、エンドユーザー企業の様々なニーズに応えやすくなりましたし、それのみならず、昨今の半導体不足の中で、車載機器によっては納期がかなり長期化するケースもあり、特定の車載機器に依存しがちの場合、常に調達リスクを抱えざるを得なかったところ、様々なデバイスラインナップへの対応があるからこそ、ビジネスの停滞を回避できるいった、弊社の事業継続の柔軟性強化の観点で、当初は想定していなかったN EDO事業の恩恵まで実感するようになってきました。
所属や役職については、取材時のものとなります。
取材:アーサー・ディ・リトルジャパン 吉岡、竹内
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